第20話「私たちとご遺族の心が一つになった気がする瞬間がある」
病院のお迎から始まり、ご自宅へとご安置
その後、葬儀の日程を決め、お寺様に来ていただき一番初めのお勤めをいただく
『では、また明日お迎にお伺いいたします』とつげると、ご自宅をあとにした
亡くなることを覚悟していたとしても、実際に人が亡くなると辛く悲しい
その、悲しみに浸る暇もなく、法律的・社会的な義務が待っているのが現実
お葬式をすることになれば、誰を呼ぶのか、その方の宿泊先から食事の段取り
故人がお世話になった方々に声を掛けるのか、掛けないのか、その方々の食事は…
式場にはどんな格好でいけばいいのか、また、泊まるには宿泊する荷物もいる
通夜から式まで、お悔やみにきていただいた方々にご挨拶をしてまわり、受付からの香典の引き継ぎなどなど、慌ただしく、めまぐるしく進むお葬式
その時間のなかで亡き人とゆっくりと過ごす時間はほとんど無い
私たちは、その時間が少しでも取れるように、段取りと打ち合わせを繰り返しさせていただく、少しずつ心が通じ合い、お葬式が終わるころには、家族の一員になったかのような感覚に
しかし、最初のボタンの掛け違いが、そのままズルズルと最後まで噛みあわない…
なんてこともよくあることである
どんなお葬式でも、ただ一度、一瞬だけ、全員の気持ちが一つになる瞬間がある
それは、お寺様が退場されたあと、喪主様よりご挨拶をいただく、その後お棺を移動してから、お花やお供え物をお棺に納める
もう一度遺族の方にお棺近くに集まっていただきその場にいる全員で・・・
・・・・・・『合 掌』
まさに、この瞬間である
式場にいるご遺族、スタッフ、お花屋さん、お寺様、会葬者の全員で合掌
いま、この瞬間だけ全員の心は亡くなった方への思いで一つになる
時間にするならば、10秒もないこの一瞬が私はお葬式のクライマックスだと思う
いよいよ、火葬場へ向けて出棺する、本当のお別れと思った瞬間
故人様の笑った顔や、泣いた顔、怒った顔、いままでの様々な思い出がよみがえる
段取りに追われていたスタッフも静かに手を合わすことにより、葬儀の意味を感じる
私の好きな場面のひとつであり、その場面に立ち会うことができた故人様とのご縁に感謝
感謝、感謝である。どうぞ、安らかに・・・・・。