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葬儀の現場から

第141話「家族」

故人様には身寄りがなくそのご葬儀の喪主を務められたのはご友人でした。

ご葬儀の打ち合わせをとお通夜の前に式場でお会いしましたが、打ち合わせをしていても「あーそれはしなくてもいいよ」「そんなにきっちりじゃなくてもいいよ」など少し投げやりにおっしゃられるので、私は最初「かなり、お疲れがでていらっしゃるのかな?」という印象でした。

少し空気を変えようと、生前の故人様についてお伺いしました。
どんな方だったのか?何がお好きだったのか?など世間話も交えながらお話をお伺いしたところ、どうやら故人様とは30年以上のお付き合いだとのこと。
これまでにご両親を亡くされ、その後お姉様をも亡くされ一人となってしまった故人様を、友人である喪主様は放っておけなかったようです。

これまでの30年間の思い出話を聞いていると、「早いこと結婚しないから…」「酒ばっかり飲んでるから…」「何にでも醤油をいっぱいかけて食べてたから…」とか「せっかく退院後の一人暮らしの家も借りてあげたのに…」「借りた部屋を一時退院の日に見て、早く退院できるように元気になろうと意気込んでいたのに…」と、憎まれ口や皮肉をおっしゃられるばかりで、ご友人というよりは、お兄ちゃんといった感じに思えました。
そんな中ふと目をあげ喪主を見ると少し遠くを見るようなうつろな眼差しでご遺影を見つめておられました。

その光景を見たとき私はハッとしました。
入院中もさることながらご家族同様、いやそれ以上のお世話をされた30年来の友人を亡くされたのに寂しくないはずがない。
本当に大切な友人だからこそもっと体を、そして自分を大切にしてほしかった、もっと長生きして欲しかった。
言葉や態度には出されませんでしたが、あの時のあの目を拝見した際にそのように感じました。
まるで血の繋がった兄弟のように。

葬儀が軽視されているように言われる昨今、葬儀の簡素化が問われている中、家族でも親族でもない友人が体調が悪くなってからというもの、お世話をされ続け、生活の様々な手配をされてきたことだけでも、なかなか出来ることではないと思いますし、葬儀をいわゆる『直葬』で執り行ったとしても誰に非難されるわけでもないのに、故人のことを想い、偲び、きっちりとご葬儀をされたわけです。
見返りがあるわけでもなくその人の為に尽くすことができる。
こういった関係こそが本当の「親友」いや、むしろ「家族」と呼ぶのではないかと思いました。
そしてこの度の喪主様の「ご家族以上に故人様に尽くす」というお気持ちは、葬儀社のスタッフとしてではなく、一個人として敬服の念を覚えました。

近年『孤独死』という言葉をよく耳にします。
これからの時代、今回のようにご友人や隣近所の住人、そして成年後見人など身内ではない方が取り仕切るようなご葬儀が増えるのではないかと思います。
そしてその全てのご葬儀が今回の喪主様のようにできるかどうかはわかりませんし、そうすることが全て正しいとも限らないわけです。
葬儀の形態は違っても、ちゃんと送って差し上げることが大切なことに違いはありません。勿論それを他人がとやかく言うことでもないかもしれません。

そこであらためて我々葬儀社が求められることを気付かせてくださいました。
それは、送る側がどういう方か、どういう送り方がよいのかではなく、きっちりと送りたいという強い思いに対して、それをしっかりと受け止め、送る方が納得いく葬送ができたと思っていただけるお手伝いをすることだと。
そんなことを感じさせていただけた貴重なご縁でした。

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