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葬儀の現場から

第139話「後悔」

「頑張って!と私が言ったら、もう頑張れない。と主人が言ったの・・・」
私が担当させていただいたご葬儀で、喪主様がそうおっしゃいました。

ご主人が癌だと診断された時、すでに完治は難しい状態だったそうです。

「主人は必ず助かる」そう信じて毎日病院へ通えるよう、また退院後の通院の事も考えて、喪主様は病院の近くのマンションに引っ越す事を決めたと仰いました。
そんな強い思いがあったからでしょう、担当医に緩和ケアを進められた時も、少しでも可能性があるなら諦めない・・・ どんな姿であっても生きていて欲しいと緩和ケアは断り、「頑張ろうね」とご主人に言ったそうです。

「もう頑張れない」というご主人の言葉に、今まで一緒に頑張ってきたのに何で諦めてしまうのか?と思い、「何で諦めるの?必ず治るから、それまで一緒に頑張ろう」と伝えたら、ご主人は黙ってうなずいたそうです。

その日の夜、ご主人の容態は悪化し、4日後にお亡くなりになったそうです。
「もう頑張れない・・・」がご主人の最後の言葉になってしまいました。
私の前では頑張ると言っていた、でも主人はもっと前からもう無理だと分かっていたのかもしれない。そんな病気で苦しむ主人に頑張れ、頑張れと残酷な事を言い続けてしまった、もっと早く楽にさせてあげればよかった。私の自己満足の為だけに、主人を無理に生かしていただけだったのかも・・・」そんな後悔の言葉を喪主様は口にされました。

別の話ですが、離婚したご主人を同じように癌で亡くされたご遺族のご葬儀を担当させていただいた事があります。その方の元ご主人も、癌が分かった時は既に手遅れの状態で、医師より余命宣告をされたそうです。
その際、元ご主人は、延命治療は一切しないと宣言し、親戚を集め、ご自身のお別れ会をされたそうです。その席で「今日が俺の葬式だ、だから俺が死んでも葬式はするな。誰も来るな、みんな世話になったな。ありがとう」
と何度も叫んだそうです。
元ご主人の意思を尊重し、延命治療は一切せず、ご葬式も元奥様と子供たちだけで直葬で行われました。
「自分勝手な人だった。家族を顧みず、好きに生きて好きに死んでいった。最後の最後までやりたい放題。これだけ自由に生きたのだから、悔いがあるとは言わせない」
と元奥様はそう言った後、
「でも、お別れ会とか強がっていただけで、本当は怖かったし寂しかったと思う。もう少し面倒みてあげてもよかったかな?」
とも仰いました。

「長生きしたし十分だろう」
「ずっと病気で苦しんでいたから、やっと楽になれたと本人も思っているよ」
「今頃天国で○○さんにあっているよ」
など、葬儀の際によく耳にする言葉です。本心でもあり、本当は自分に言い聞かせる言葉なのかもしれないと思うことがあります。

大切な方の死を受け入れる事は簡単な事ではありません。
大切な方が亡くなった時、こうしてあげれば良かった、もう一度会いに行っておくべきだった・・・など思いは様々ですが、誰しも多かれ少なかれ後悔の念に苛まれる事があります。

初めの奥様は頑張れと言い続けたご自身を責めておられました。
元奥様も散々ご主人の悪口を言っていましたが、もう少し面倒見てあげればよかった・・・が本心だったのだと思います。

最近、人は誰もが大切な方を亡くした時、何かしら後悔されるものなのだと思う様になりました。その後悔は、悲しみからの後悔、生前の出来事に対する後悔、故人さまへの想いからくる後悔・・・。内容も、度合いも様々だと思います。

勿論、葬儀は大切な方を見送る大切な儀式です。その後もご遺族の何かしらの後悔は続くのではないでしょうか。だからこそ、ほんの少しでも、ほんの一瞬でも、心が和らぐお葬式を提供できるように心がけようと強く思わされました。

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